【雰囲気で掴む】外為法について元銀行員がわかりやすく解説

銀行の噂
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こんにちは、たろけんです。

つい先日、みずほ銀行が外為法に違反し処分される見通しというニュースが飛び込んできました。

相次ぐシステム障害で度々問題を引き起こしてきたみずほ銀行ですが、とうとう金融庁から追加の業務改善命令が出される見込みです。

銀行にとって、業務改善命令が出されるというのは非常に重たい処分となります。

ただ、今回のニュースで外為法の存在を知った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

  • 外為法ってなに?
  • 銀行ではどういうチェックをしているの?

など、元銀行員の実体験などを交えながらざっくり解説します。

外為法とは?

今回みずほ銀行が違反したと言われる外為法。

そもそもなんと読むんでしょうか。

たろけん
たろけん

これは読めないですよね笑

これは『がいためほう』、と読みます。

正式名称は『外国為替及び外国貿易法』といいます。

どういう法律なのか?

一言で言えば「外国とものやお金のやり取りをする時の規制」です。

外国とのやり取りを安全かつスムーズにすることで、安心して生活ができるようにしています。

銀行が関わってくる部分で言えば「マネーロンダリング」を防ぐことを目指しています。

外為法を無視する→テロを助長している

という図式が見えてしまうほど、重要なものです。

日本銀行のHPでは次のように解説されています

外為法(「外国為替及び外国貿易法」)は、わが国と外国との間の資金や財(モノ)・サービスの移動などの対外取引や、居住者間の外貨建て取引に適用される法律です。外為法の目的は、対外取引に対し必要最小限の管理・調整を行い、対外取引の正常な発展やわが国または国際社会の安全の維持等を促すことにより、国際収支の均衡と通貨の安定を図り、さらにはわが国経済の健全な発展に寄与することです。

…。

何を行っているのかさっぱりわかりませんね笑

登場する用語も難しいと思うので、順に触れていきます。

外国為替とは?

そもそも為替とは?と聞かれて、明確に答えられるひとも少ないのでは無いでしょうか?

為替とは、現金を使わずに代金のやり取りをすることです。

例えば、Amazonでお掃除ロボットを注文したとしましょう。

この時、販売店に直接現金を支払いに行く人はいませんよね。

振り込みを使って料金を支払ったと思います。

この行為こそが為替なのです。

これの為替が国内で完結すれば「内国為替」略して内為(ないため)、海外とのやり取りであれば「外国為替」略して外為(がいため)になるのです。

外貨建て取引とは?

外為とは外国と資金の遣り取りをすることでした。

例えばアメリカの会社から商品を買った時に、代金を日本円で支払うのか、それともアメリカドルで支払うのか?という問題が発生します。

この時、日本円以外(米ドルとか)で支払いをすることを『外貨建て取引』といいます。

ここまでの情報をもとに、日銀の解説文を噛み砕いてみましょう。

外為法(「外国為替及び外国貿易法」)は、わが国と外国との間の資金や財(モノ)・サービスの移動などの対外取引や、居住者間の外貨建て取引に適用される法律です。

とは、次のような意味になります。

外為法とは、外国とお金や商品のやりとりをする場合や、日本人同士で代金の支払いに日本円以外を使うときのルールを定めたものである

外為法の目的は?

外為法とは外国とものやお金のやり取りをする時の規制のことでした。

では外為法の目的は何でしょうか?

それはズバリ、犯罪グループに資金が渡ることを防ぐということです。

また日銀の解説文から読み解いてみましょう。

対外取引に対し必要最小限の管理・調整を行い、対外取引の正常な発展やわが国または国際社会の安全の維持等を促すことにより、国際収支の均衡と通貨の安定を図り、さらにはわが国経済の健全な発展に寄与することです。

ざっくりとした意味としては、「日本や国際社会の平和を守ることで、日本経済を成長させること」が、外為法の目的になります。

例えば、軍事転用可能な技術なんかがテロリストの手に渡ってしまうと、国際社会の平和が崩されてしまいますよね。

また、なにか具体的なモノでなくとも、日本からの送金がテロリストに渡ってしまうと、間接的にテロリストの活動を支援することにつながってしまいます。

複数の国家をまたぐとテロリストの活動を捉えることが困難になるため、海外送金や輸出入はそういった悪事の温床になりやすいです。

この様な自体を出来る限り防ぐため、外為法が存在します。

海外とのモノやお金のやり取りをチェック・規制することで、犯罪組織を助長しないように、我々の生活の安全を守ってくれているわけです。

銀行における外為法

では、銀行と外為法はどの様な関係にあるのでしょうか。

一番関わりが深いのは、海外送金です。

というのも、海外にお金を送ったり、逆に海外からお金を受け取ったりする際には、銀行を通してお金を送ることが多いです。

なので、銀行でも外為法に抵触していないかを確認するわけです。

例えば、銀行の窓口に「海外へお金を送りたい」という人が来たときには次のことをチェックします。

顧客属性をチェック

まずは海外送金に関わらずですが、顧客の属性を確認します。

平たく言えば「反社会的勢力」ではないことの確認です。

また、海外送金のケースで多いのは、外国人の方が日本でのお小遣い稼ぎを目的にマネロンの手伝いをしてしまうケースが多いです。

経験則で多いのは、日本語がほとんどしゃべれない口座所持者と通訳を称するコーディネーターのコンビでの来店です。

本人は全く喋らないのに、隣りにいる人があれこれ指示をする。

うーーん怪しさ満点。

基本的に銀行取引というのはその個人とのみ取引をするので、第三者が介入するのは望ましくありません。

疑わしい場合は取引をしないのが原則なので、こういうケースでは手続きをお断りをしてしまうことが多いですね。

送金場所のチェック

続いてチェックするのは、送金場所です。

外為法に於いて、「どこの国に送金するのか」も非常に重要な材料です。

外為法では「特定国(地域)に関する支払規制」という形で、北朝鮮やイランなどの特定国への送金を禁じています。

送金したお金がロンダリングされて核開発やテロ活動に使われてしまう可能性が高いことから、こういった処置がなされています。


私は銀行にいた頃に、この特定地域への送金をお断りした経験があります。本人は「家族への仕送り」と言っており、大変心苦しい思い出はありましたがお断りをしました。

送金目的のチェック

送金目的も重要なチェック項目です。

特に要注意なのは貿易業者や中古車販売業者などの業者です。

彼らが全員悪者というわけでは当然無いのですが、マネーロンダリングの温床となりやすい環境になっています。

これらの業者は海外との資金のやり取りが非常に活発です。

なので頻繁に海外送金を行っていても不自然ではなく、その中にマネーロンダリングを忍ばせやすい、という背景があります。

また、実はペーパーカンパニーで、取引のすべてがマネーロンダリングを行うものだった、というケースもあります。

なので、送金目的も厳しくチェックされるわけです。

送金金額

まだチェックするのかよ!と思われるかもしれませんが、送金金額もチェックしています。

これは送金目的と合わせてチェックすることが多いです。

送金金額に関しては、高額だと別の規制の対象になるのでチェックするという目的がありますが、その他にも送金目的との整合性も見ています

例えば、「留学している子供に生活費を送りたい」と海外送金手続きに来た人がいるとしましょう。

その送金額が200万円のだとどうでしょうか?

生活費が月10万かかるとしても20ヶ月分になりますよね。

明らかに過剰です。

こういう場合には「本当に問題ない取引なのか?」をチェックするために、更にヒアリングを続けていきます。

正当な理由、正当なエビデンス(証拠資料)がないのであれば、取引をお断りすることになります。

仮に「留学する大学への入学金・授業料も含まれている。金額は大学からの請求書に記載がある。」ときちんとした正当性を示すことができれば、上記の送金を受け付けることができます。

この他にも、外為法に則りたくさんのチェックをし、問題なかった場合のみ海外送金が実行されます。

…正直めんどくさいと思いませんか?

事実、あまりのチェックの多さにうんざりするお客様をたくさん見てきましたし、手続きする側もとても面倒でした。

ただこのチェックが、マネーロンダリングを防いでいるのです。

みずほ銀行の外為法違反について(2021年11月)

最後に余談ではありますが、今回の騒動について触れておきます。

ネットニュースによると、9月に発生したシステム障害の際、外国為替及び外国貿易法(外為法)で定められた手続きを行わずに海外送金を行っていたことも判明したとあります。

この記事を読んでくださった方はイメージが付くかもですが、外為法で定められた手続きというのはものすごく手間がかかります。

システム障害で手続きが滞ってしまい、チェックせずに送ってしまったようです。

ただ、外為法はマネーロンダリング、ひいてはテロや犯罪を防止することが目的です。

今回はたまたま問題がある取引はなかったそうですが、重大犯罪につながった恐れもあり非常に由々しき事態であると言えます。

今後どうなるかはわかりませんが、こういった不祥事がなくなることを祈るばかりです。

この記事のまとめ

  • 外為法とは、海外とお金やモノをやり取りする際の法律
  • マネーロンダリングを防ぐことを目的としている
  • 銀行で海外送金をする際は、厳格なチェックが有る

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